情報提供医師

石橋 徹(福岡ひざ関節症クリニック 院長)

医学博士/日本整形外科学会認定 専門医/日本リウマチ学会認定 専門医

石橋医師の詳しいプロフィール

なぜ再生医療を行なうのか?

「以前のように自由に歩けるようになりたい」
「痛みを気にせずのびのびと生活したい」
「人工物に頼らず、生涯自分の膝で過ごしたい」
再生医療には、患者様のそんな切実な思いを叶えるチカラがあります。だからこそ、私たちは再生医療に特化した治療をご提供しています。

これまでの膝治療と再生医療の膝治療はどこが違う?

変形性膝関節症などに代表される膝関節疾患は、長らく、一度進行し始めたら元の状態に戻すことは難しいと考えられてきました。従来の治療の多くが、残存する機能をいかに維持するか、あるいは、関節の代替となる人工的な機器(例えば人工関節など)の性能をいかに向上させるかに重点を置いてきたのはこのためです。
再生医療は、こうした状況を一変させました。再生医療の登場によって、これまで不可逆的と考えられてきた関節組織の劣化・損傷を、修復、さらには再生できるかもしれないという可能性が出てきたからです。
実際、膝の痛みと変形によって不安定な歩行しかできなかった方が、再生医療でめざましい回復を見せ、治療後にはかなりスムーズに歩けるようになったという例を、私たちはこれまでにいくつも目にしています。

再生医療は身近なものになりつつある

メジャーリーグで活躍する田中将大投手や大谷翔平選手が、再生医療でケガの治療をしたということは、多くの方がご存じかと思います。彼らが治療したのは肘ですが、この事実は、年間何億円も稼ぐ商売道具の命運を託すほど、再生医療が信頼度の高いものになりつつあるということの証明に他なりません。
こうした背景も後押しとなって、再生医療の認知は広まり、膝の再生医療に関する知見もかなり蓄積されてきています。当院で再生医療やそれに準ずる先進的な医療で膝の治療を受けた患者様は、累計約8,000人。再生医療は、今や決して一部の著名人だけが受ける特別なものでありません。

再生医療のメリットとデメリット

再生医療には多くの可能性が秘められていますが、その新しさゆえ、まだわかっていないことや課題も残っています。治療を受けるべきか正しくご判断いただけるよう、現時点でわかっている再生医療のメリットとデメリットをまとめました。

メリット デメリット
①持続的な効果が期待できる ①必ず効果が得られるとは限らない
②進行を止めるだけでなく、改善も期待できる ②一部を除いて公的保険が適応されない
③体への負担が少ない ③全ての人が受けられるわけではない

メリット

①持続的な効果が期待できる
・ヒアルロン酸注射や痛み止めの服用など、いわゆる対症療法的な治療は効果の持続時間が短く、定期的な受診が必要になります。・一方、再生医療のアプローチは組織の修復と再生を促すものなので、一度の治療で持続的な効果が期待できます(目安は数ヵ月から数年)。

②進行を止めるだけでなく、改善も期待できる
・従来の対症療法的なアプローチの目的は、今ある症状を抑え、重症度の進行を遅らせることです。・再生医療的なアプローチは、症状の進行・悪化を食い止めるだけでなく、膝の機能回復までを視野に置くことができます。

③体への負担が少ない
・再生医療の治療は、基本的には外来治療で行うことができます。・治療後のリハビリも通院かご自宅で行なっていただくことができます。注)自家培養軟骨移植術については入院を伴います。

デメリット

①必ず効果が得られるとは限らない
・治療前には事前にMRI検査を受けていただき、適正のチェックを行います。これによって、どのぐらいの効果が見込めるかはある程度予測できます。・しかし、それでも時には治療の効果が得られなかったということがあります。・重症化するほど予測しにくくなるという傾向があるようです。

②一部を除いて公的保険が適応されない
・現時点(2020年秋)では、軟骨の移植手術を除いて公的保険は適応されません。・公的保険が適応されるには、長期間をかけた臨床研究と、それを受けての厳密な審査を経なければいけません。別の言い方をすると、保険が適応される治療法というのは、すでに何年にもわたって検証が繰り返された、決して新しくない治療法と言えます。・本当の意味で新しい治療をお求めなら、自由診療という形で受けざるをえないというのが、我が国の現状です。

③全ての人が受けられるわけではない
再生医療の適応外となるのは、次の合併症をお持ちの場合です
・悪性腫瘍・感染症・重度の糖尿病・血液の凝固障害

実用化されている「ひざ」の再生医療

膝治療で実用化されている再生医療をご紹介します。当院で扱っている治療については詳細ページへのリンクがありますので、合わせてご確認ください。

幹細胞を用いる再生医療:培養幹細胞治療

幹細胞とは将来様々な細胞に分化する能力を持った細胞で、標的組織の修復や機能回復が期待されることから、再生医療のキーファクターとして注目されています。幹細胞にはいくつか種類がありますが、培養幹細胞治療では、患者様自身の脂肪細胞に含まれる幹細胞(脂肪幹細胞)を利用します。
【培養幹細胞治療の特徴】
・採取する脂肪量は20mL(少量なので体に低負担)・脂肪細胞から抽出した幹細胞を6週間かけて培養・培養した幹細胞は保存可(複数回注入が可能)

<幹細胞の種類>
再生医療のキーファクターでもある幹細胞には様々な種類がありますが、培養幹細胞治療に用いる脂肪幹細胞は、簡単に採取でき、かつ安全性も高いことから、現在実用化が最も進んでいます。

①ES細胞
(胚性幹細胞)
②iPS細胞
(人工多能性幹細胞)
③造血幹細胞 ④脂肪由来幹細胞
細胞源 ヒトの受精卵 ヒトの体細胞 自己骨髄、臍帯血、末梢血など 自己脂肪組織
分化機能
安全性 ×
手軽さ
倫理上の問題 ×

①ES細胞(胚性幹細胞)
ES細胞は、ヒトの受精卵が胎児になる途中で、その胚の中にある細胞を採り出し、これを培養して作成します。身体を構成するあらゆる細胞に分化する能力がありますが、現状では100%の確率で目的の細胞に分化させることができないため、実用化には至っていません。また、本来人間の赤ちゃんになるはずだった受精卵を操作する必要性があることから、倫理的な問題も指摘されています。

②iPS細胞(人工多能性幹細胞)
iPS細胞の特徴は、すでに分化した細胞から人工的に作り出すことができる点にあります。成熟した体細胞にいくつかの遺伝子を入れて、未成熟な状態に逆戻りさせるというものです。治療時には、培養して分化が完了したものを体に移植する医療で、適応症例や安全性が慎重に検討されている段階です。

③造血幹細胞
造血幹細胞は、基本的には骨髄に存在し、採取するには大掛かりな手術を要します。ただ、特定の薬剤の投与下では、造血幹細胞が骨髄から全身の血液中に流れ出すことがあるので、これを狙って造血幹細胞を採取することも可能です。また、赤ちゃんとお母さんを結ぶ臍帯(へそのお)と胎盤の中に含まれる臍帯血にも、造血幹細胞は存在します。治療が困難な脊椎損傷や肝機能障害などへの治療効果が期待されている幹細胞です。

④脂肪由来幹細胞
造血幹細胞と同等の能力を持ちながら、容易に採取できるということで注目されているのが、脂肪由来幹細胞です。脂肪由来幹細胞は脂肪組織から幹細胞を抽出することで採取できます。脂肪は全身にくまなく分布するため、大量に、かつ比較的安全に採取できる点がメリットです。このため、最も実用化に近い幹細胞とも言われています。

血液を材料にする再生医療:PRP治療

PRPとは Platelet-Rich Plasma の略称で、多血小板血漿とも呼ばれます。要は血液中の血小板を濃縮したものです。PRP療法では、血液中の血小板に含まれる成長因子(治癒反応を促進させるタンパク質)や炎症を抑える抗炎症サイトカインの働きを利用して、治療を行います。
【PRP治療の特徴】
・スポーツ外傷、変形性膝関節症に有効・手術不要、注射だけで実施・治療は1日で完了・採血量は30mL

<血小板の何が有効なの?>
血液中の血小板には、自然治癒力を高める「成長因子」が多く含まれます。ちょっとしたかすり傷が自然に治っていくのは、この成長因子の働きによります。
成長因子の代表格は以下の5つです。

・CTGF:軟骨細胞の再生・PDGF:細胞分裂を促進、コラーゲンの生成・VEGF:血管内の細胞の新生・TGF-β:傷の治癒を促進、コラーゲンの生成・FGF:組織を修復
PRP治療を行なった際、損傷を受けた膝関節内でこれらが大量に放出されることによって、炎症の鎮静、痛みの減少、 関節可動域の向上などが期待されます。

軟骨細胞を用いる再生医療:自家培養軟骨移植術

患者さん自身の軟骨を体外で培養し、それを欠損した部位に移植します。すでに一部の疾患では、通常の保険治療として受けることが可能です。
【自家培養軟骨移植術の特徴】
・状態によっては公的保険で治療が受けられる・移植手術後約1ヵ月は入院が必要・治療後2ヵ月程度で仕事復帰可能

ひざ再生医療の適応チェック

培養幹細胞治療、PRP-FD注射に興味はあるけれと、適応かどうかがよくわからないという方は、参考として次の項目をチェックしてみてください。受診の目安になると思います。

以下の項目が1つでも当てはまる方は、なるべく早く受診されることをお勧めします。
□ 人工関節置換術の適応があると主治医に言われている□ 変形性膝関節症の治療を3年以上続けている□ ヒアルロン酸注射を繰り返し受けている□ 痛みのせいで、外出が億劫になりつつある□ 夜間、膝の痛みのせいで目を覚ますことがある

以下の項目が1つでも当てはまる方は、予防のための受診をお勧めします。
□ 階段の上り下り(特に下り)に時間がかかる(手すりが必要、もしくはできない)□ 痛みや不安定さのため、走ることができない□ 膝を十分に曲げ伸ばしできない□最近、素早く動けないことがある□ 屈伸するとゴリゴリと音が鳴る□ 最近頻繁に水が溜まるようになった

以下の項目が当てはまる方は、「いざ」という時のため再生医療について知っておいて下さい。
□ 以前よりも正座が苦しくなってきた□ BMIが25以上ある□ 最近ゆっくり休めていない□ 治すならきちんと治療したい□ 生涯自分の足で歩き続けたい

再生医療の適応診断の流れ

1.検査
・MRI検査を受けていただき、関節内の損傷部位と損傷の程度を確認いたします(すでに膝のMRI画像をお持ちであれば不要です)。

2.問診/触診
・どこにどのような痛みを感じるか、痛みの程度はどれぐらいか、いつから痛むか、これまでにどのような治療を行なってきたか、当院の治療でどう変わりたいかなど、ご状態に関することともに、治療に対するご希望も事細かくお伺いします。・実際にお膝を触らせていただき、実際の骨や腱の状態を確認させていただきます。

1と2から総合的に判断し、治療の適応があると考えられた場合は、治療の注意点とスケジュール、費用など、より具体的なご説明をいたします。

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